空気を読んだ試合とは何か


ヒョードル対ハントが決定して、この試合について高田本部長はヒョードルは期待に応えて打ち合いをしてくれると思うと語ったり、ファンがヒョードルは空気を読んですぐにグラウンドに持ち込まないで打ち合えといったりするファンもいるが、この風潮には賛同できない。お互い勝利への最短距離を目指す試合がやっぱり真剣勝負だと思うから。ヒョードルがハントのグラウンドに穴があるだろうと思って、組みつきにいく、それをハントが凌いで得意の打撃のフィールドに試合を持ち込む。こういうガチンコな攻防が見られたらそのときが一番興奮する試合展開になると思う。ヒョードルが盛り上がるだろうからって打撃戦を望んでする展開は関心できない。というかハント相手じゃKO負けのリスクがある分ヒョードルとはいえそこまで余裕はこけないと思う。ただミルコ戦みたいに組み付くために、打撃を使ってプレッシャーをかけていく試合展開ならそれはありだとは思うが。


そこで勝敗を第一に考えず、空気を読んで試合を盛り上げる試合というのはどういうものか考えたいと思う。これをするには試合の実力差が相当にある場合と、勝敗自体にあまり意味が無い場合と二通り考えられと思う。前者はハント対西島、ヒョードル対コールマン(二戦目)、後者には高山対フライ、美濃輪対バートンなどが挙げられると思う。後者は主にプロレスラーが絡んでることが多いが、今回はほぼ前者に絞って考えたい。なぜ試合の実力差が相当にあると空気を読んだ試合ができるのか。それは実力の高い側の人間にとって対戦相手の攻めがほとんど脅威に感じない、KO負けなり一本負けをする可能性がほぼ無いと感じるから、試合内容をほぼ思い通りにコントロールでき、フィニッシュも思ったとおりの時間、技でできるというのがその理由だと思う。大人と子供の試合で大人側が盛り上げるために手を抜くのに近いイメージだと思う。ケツ決めがあって試合内容を作るプロレスにも近い。


そして空気を読めということでよく出てくるのが西島の対戦相手だろう(苦笑)。西島がデビュー戦のハント戦で名勝負?をしたせいで、ファンが西島にいつもああいう試合をしてほしいという期待を
するようになってしまった。ただあの試合は相手のハントが体重差もあったせいか西島の攻撃のほとんどに脅威を感じなかったから試合内容をコントロールしてただけの試合だった。そしてそれ以降の相手吉田、サイボーグ、バローニらは速攻でグラウンドに持ち込み西島は何もできず負ける内容が続いている。ファンは西島の対応力の無さを責めるべきなのに、全てでは無いが一部のファンは対戦相手にグラウンドに持ち込まず空気を読んで打ち合えという意見もあった。こういう意見が飛び交うのはハント対西島の試合のせいだろうと思う。とにかく空気を読んだ試合というのは実力差が相当にあって初めてできる試合で、それで盛り上がってる試合は、真剣勝負というよりプロレスに近いものなんじゃないかと思う。


そしていきなりバローニについてだけど、彼は美濃輪相手に塩漬けされて負けているが、美濃輪の戦法のことを「やつは俺の脚にしがみついてばかりいるゲイみたいな野郎だ。男なら真正面から打ち合え」といっていたが総合格闘技の試合でこんな発言すること自体理解不能だった。ある種の作戦、誘いもあるのかもしれないとは思うが。そして「近藤なら真正面から打ち合うだろう。あいつは逃げないだろう」と発言し、近藤もその発言を事前コメントで聞き若干戸惑いを見せていた感があった。そしてバローニが一番強い開始当初のラッシュに正面から付き合い、玉砕した。まんまとバローニの作戦にはまったともいえた。「打ち合いから逃げるな」的な発言を総合の舞台で繰り返すバローニだが、西島相手には全てを翻すがごとく、速攻グラウンドに持ち込んでいたが(笑)、これから「打ち合いから逃げるな」的な発言がどうなるか注目だろう(笑)。


総合格闘技において相手の一番得意なフィールドに付き合うのははっきりいって愚の骨頂。総合格闘技はいかに相手の得意フィールドでなく、苦手フィールドに自分の苦手フィールドでなく得意フィールドに持ち込むかを競う競技といってもいい競技だと思う。なのになぜか高田本部長や佐伯氏は、「ヒョードルは打ち合ってくれる」「近藤選手なら真っ向打ち合いをしてくれる」と相手の得意フィールドに付き合ってくれるだろう的な発言を公式に繰り返している。プロモーション的なものが必要なのは理解するが、こういう発言を繰り返したり、西島対ハント的な試合がまた繰り返されると、それこそ総合格闘技の根本が否定されるような気がするので、空気を読んで打ち合え的な風潮はあまり浸透していかないでほしいと思う。


追記
映像でヒョードル対コールマン二度目を見たけど、ヒョードルは空気読んでるわけではなく、コールマンの頑張りの印象が強かった。見てないのに、ヒョードルが空気を読んだ試合という発言をしたのは、二人の選手とファンには申し訳なかったと思う。